フィリピン台風支援現場視察 セブ島
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フィリピン台風支援現場視察 セブ島

2014年04月29日(火)7:59 PM

IMG_1138 (1024x768)この春319-24日にセブを訪問し、22日には、昨年秋のフィリピン台風(現地ではヨランダ台風と呼ばれている)の被災地の一つである、セブ東北部のSan.Remigio(サン・レミヨ)地区、Patan(パタン)地区、Anapog(アナポグ)地区を視察しました。San.Remigio地区は、FCS2009年より教育支援活動で協力している現地団体のメンバーの一人であるジャニス氏の出身地でもあり、災害発生直後FCSとしてはまず、ジャニス氏とジャニス氏の住む近隣コミュニティの半壊した家屋の屋根の修復のために義援金を送らせて頂いたことから、現地に到着して最初にジャニス氏のご実家の修復された家を訪れ、当時の状況をあらためて伺いました。
ジャニス氏の父上は地元の住民の方々信頼の厚い方で、半壊した自宅の修理の傍ら被災住民宅を訪問し、倒壊家屋の廃材撤去作業や当座の家の修理などを手伝っておられました。また、Patan地区は、氏の父上と親戚の叔父上(バランガイ・カウンセラー=日本でいう民生委員)が長年コミュニティの自立支援で携わってきた地域であったということで、台風による被災前と被災後の彼らの活動について、現地のコミュニティの住民を訪問しながら様々な話を伺うことができました。訪問した日には地域の住民の方々が集まって今後の生活再建のための経済活動を地域ぐるみでどのように行っていくかの会議がなされていました。

IMG_1176Anapog地区では、ジャニス氏の兄上であるリヴィー氏(現地のNGOAssociation For Righteous Movement代表)が、災害前から70のコミュニティにおいて住民のリーダー育成に深く関わり、災害時に際しては緊急支援をはじめ地域住民が少しでも早く自立生活ができるように継続して働きかけをしていること、また、フィリピンでは腐敗が多いバランガイリーダー(地方自治区の区長)に対してもアプローチし、志のあるリーダーに働きかけ、地域住民のための自治を、ヴィジョンを持って行っていけるように育成する取り組みをしていることを伺いました。
今回の台風では、セブ島北部の沿岸部で高潮による農地の塩害と船の損壊・流失、暴風による家屋やココナッツ、マンゴーの木の倒壊などの被害が多く、元々漁業と農業で細々と生計を立ててきた地域住民の生活は従来に増して厳しいものとなっており、日本の東北の事例と同様、災害発生以前から存在していた地域の問題と、災害に直接起因する問題とは分けて考えていく必要があることもあらためて実感しました。

しかし、今回の訪問で分かったことは、被災直後から現在に至るまで、ジャニス氏の父上、兄上、叔父上など現地のリーダーシップによる被災地の自助・共助による支援活動が行われていたこと、それだけでなく、セブ島中心部のセブ市内から現地の企業・国際的な繋がりを持つNGO団体、ボーイスカウトやガールスカウトなどの活動に加わるという形で、中流階級や上流階級からも志の高い人々が緊急支援とその後の復興支援に継続的に関わる動きがあったということです。台風被害発生後の数週間は、緊急支援にセブ中心地から北部の被災地に向かう車の列で幹線道路が渋滞したほどです。

この事実は内外のメディアによっては全くといっていいほど報道されていなかったため、私たちも実際に現地を訪れるまではセブ北部の被災地の現状を明確に把握できていなかったのですが、こうした事実を多く知り、大変感銘を受けました。実際、私たちがSan.Remigio地区からPatan地区へ移動する最中にも、セブ市に隣接するマンダウエ市のボーイスカウトの一団が、台風で倒れてしまったために撤去されたマンゴーの木の畑に、新しい苗木の植林作業をしているのに出会いました。

その一方で、日本を含め海外の団体からフィリピン政府に送られた多額の義援金の多くは、残念なことに被災地のために有効に用いられていない事実があることもわかりました。
セブ市内に事務所のある国際的なフェアトレード団体(SPFTC)のセブ支部代表ジジ氏によると、災害発生直後の緊急食糧支援のために政府から送られた食糧のほとんどは賞味期限切れであったり、米には虫がわいていたりで食糧として使い物にならず、倒壊家屋の修復のために必要な資材を購入するための援助を政府に申し出ても、受け入れられず、結局団体独自のネットワークで直接義援金を集め、被災住民の倒壊家屋の修復を行っていました。実際にSPFTCによって再建された家屋の写真を見せてもらいましたが、日本の東北で起こった現象と同様、被災地復興特需のために売り手市場で、週ごとに建築資材の値上がりが続き、限られた財源での資材の確保が困難になっているという問題点も指摘されました。

今回、日本からも様々な団体を通してフィリピン台風災害支援のために義援金が送られましたが、上記のように、現地の人々によって構成され平素から地道な活動を続けているNGONPO団体に直接義援金が渡ることが、最も必要なことのためにリアルタイムで有効にお金が用いられる手段なのだとあらためて思いました。
いずれにせよ、セブ東北部に関しては、日本の自衛隊による緊急支援があったことも大きかったのですが、災害発生直後から、地元の多くの善意ある人々や団体、企業によって「共助」の取り組みがなされていたことは、注目に値すべきことであると同時に、このことがもっと海外に発信されるべきであると思いました。

この災害に際し、FCSがさせて頂いたことは、San.Remigioの緊急物資支援、半壊家屋修理、同じくFCSの現地協力メンバーのもう一人、サニー氏の故郷であるレイテ島にある、倒壊したご実家の再建支援、コミュニティの近隣住民の方々に対する緊急支援物資支援です。
ご寄付のご協力をいただきました皆様に御礼申し上げます。

今回の台風で被災した地域として主に海外に報道されたのはレイテ島とタクロバン島ですが、他にも多くの小さな島々の住民が被災しています。これらの島々には、マニラに本部を置く教育・医療支援団体の
HEMMI代表のジョイ医師が継続的に訪問し、緊急支援と医療支援の活動に当たっていますので、今後FCSでは、一定の目処が立つまで主としてHEMMIを通して支援を継続していきたいと考えています。

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